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祖母-010412 | c3

祖母-010412

 おそらく3年ほど振りだったろうか、浅川にある父方の実家へ、結婚の挨拶のために伺った。数ヶ月前にアルツハイマーに罹ったと聞いていた祖母と、父親の兄夫婦が玄関で迎えてくれたが、いつもなら「朋ちゃんおひさしぶり」と言って迎えてくれていた祖母は「わざわざおつかれさんです」としか言わなかった。数十年一緒に暮らしていた従兄弟のことも覚えていないようなので、僕のことを覚えていなくても無理はないと思っていたが、実際に忘れられてしまうと寂しくなる。なぜか一緒にいた僕の妹のことは覚えていたようで、ほっとするような、嫉妬するような感情になる。
 当然だが、祖母は数年前に比べてさらに小さくなっており、染めていた頭髪も今はすべて白髪のままで、艶々したそれを美しいと感じる。
 叔母が人数分のお茶を入れてくれたが、一つだけ白湯の入った湯呑みがあり、それを祖母の前に置いた。あれ、と思い祖母にお茶は飲まないのかと聞くと、嫌いだと言う。怪訝な顔をした僕の顔を見て、叔父が説明してくれた。普段お茶を飲んでいたことを忘れているらしい。「飲んだこともないものを嫌いだなんておかしいね」と言いながら白湯をすする。
 アルツハイマーと聞いて、もう少し刺々しくなっているかと思っていたが、今の祖母は昔よりも穏やかな顔をしていた。こちらとしてはそれを救いだと感じるが、一緒に暮らしている叔父夫婦は大変なようで、仏壇にもマッチを置いていない。
 おやきやりんごなど、大量のお土産をもらってそろそろお暇しますと言うと、玄関の外まで送りに出てきてくれた。何かの拍子にまた僕のことを思い出すということはあるのだろうか。


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